プログラム活動

第7回関東リトリート(2016年8月)

8月18,19日に,群馬県伊香保温泉にて関東研究医養成コンソーシアム第7回夏のリトリート(関東リトリート)が行われました。今回は群馬大学主催で,群馬大学,千葉大学,東京大学,東北大学,山梨大学,北海道大学,横浜市立大学,順天堂大学そして金沢大学の9大学から学生56名,教員19名が参加し,本学からは学生5名,教員3名が出席しました。

医学類6年 遠山 友希発表内容及び表彰状はこちら

 発表タイトルは「Atf6αの欠損は舌下神経軸索切断後のミクログリアの活性を抑制し、 神経保護に寄与する」で、ポスター発表であった。発表終了後、東日本・北日本地区の大学の学生同士で議論を行い、親睦を深めるとともに、今後の研究へのヒントも得ることができた。基礎医学に従事する教員より研究者としてのキャリヤについて講演があり、自らのキャリアパスを考えるヒントを得た。ポスターコンテストの投票の結果、ポスター発表部門優秀賞として表彰された。
 今後の自身の研究の予定としては、特にミクログリアの活性化について、その指標となる炎症性サイトカインや神経保護因子の発現を、PCR法やWestern blot法等などの生化学的手法を用いて定量的に評価することを計画している。そして、それらの結果を整理・分析し、研究論文としてまとめ、医学類在籍中に提出したいと考えている。
 これまでの研究活動を振り返ると、当初はあまり芳しい結果が得られず厳しい日々が続いたが、根気強く続ける中で今回の研究結果を得ることができた。これまでの活動を通して、研究を行うことの喜びと厳しさを体感した。今後は、一度研究を離れ、臨床研修を経たのちに、臨床の視点を持った医師として、再び研究の楽しみをもう一度享受しつつ活躍できるように研鑽していきたいと考えている。

医学類4年 高山 秀雄

 まず研究内容についてです。私は、「解毒酵素Glyoxalase 1の遺伝子多型の発見とその意義」という題でポスター発表を行いました。その内容と今後の展望は次の通りです。
生物は解糖系やクエン酸回路を使ってエネルギー媒体であるATPを効率よく産生して生命活動を行っています。しかしながら、その過程において解糖系の側副路から漏れ出る反応性の高い代謝副産物を生じてしまいます。つまり、長い生命活動を維持することは、その分そのような副産物にも曝されることになります。具体的にはα-ジカルボニル化合物であるメチルグリオキサール(MG)がその一つであり、最終的にタンパク質、DNAなどの生体高分子化合物に修飾を加え、機能低下や遺伝子変異を引き起こす可能性があります。
 Glyoxalase 1(GLO1)はこのMGを代謝分解する酵素です。糖尿病状態の高血糖によりGLO1の発現が低下する一方、がん細胞では数十倍もその発現が上昇していることが知られています。また、統合失調症ではGLO1の変異が報告され、医学生物学領域においては大変重要な酵素と考えられています。しかし、GLO1の発現がどのように調節・制御されているのかの詳細は未だに分かっていない点が多いです。私たちのグループは、ヒトGLO1プロモーター領域ホモポリマー遺伝子多型を新たに発見し、GLO1転写発現調節機構の解明に取り組んできました。この遺伝子多型はGLO1の転写を著しく亢進し、その分子機構はエピゲノム調節であることが分かりました。
 今後、ヒトGLO1プロモーター領域ホモポリマー遺伝子多型と病態(糖尿病合併症、統合失調症など)との関係を明らかにしたいです。
 次に、将来のキャリア設計についてです。特別講演で群馬大学の滝沢琢己先生と和泉孝志先生のお話を聞きました。滝沢先生は4年間の小児科医としての研修を終えたのち、基礎の道に進んだとのことでした。特に東京医科歯科大学時代の始発の新幹線で通勤していた頃のお話しが印象的でした。興味本位を原動力とし、仮説を立て、実験計画を立案し、実験している時のドキドキ、ワクワク感をお話されており、研究の面白さを認識し続けていたいと思いました。和泉先生は内科研修後に呼吸器の研究室に所属して5年間在籍されたのち、基礎の道に入ったとのことでした。カロリンスカ研究所のサムエルソン教授と国立国際医療研究センターの清水孝雄先生という著明な2人のメンターから学んだ研究に対する姿勢をお話されており、人とのつながりを大切にしたいと思いました。

医学類4年 鍛冶 稔

 今回第7回関東リトリートに参加して、研究に携わっている他大学の医学生と交流できたことが大きな経験になった。まず自分のテーマに近いものから、関連のなさそうなものまで様々な分野の研究内容を聴くことができた。例えば公衆衛生学分野でペットの有無が高齢者の生活の質に及ぼす影響について調べた研究があり、その分野の学生発表を聴いたことがなかったこともあって、かなり興味深かった。
 またポスター発表及びディスカッションを通じて、自分の質問力の無さを痛感した。他大学の学生さんの中にはほとんどの発表に対して何かしら気になった点を挙げられる人がいたのに対し、自分は何とか理解するのがやっとであった。あとは将来研究の道に進むことを決めている人に会ったり、逆に臨床の道へ進む人に会ったり、自分の将来についても改めて考えさせられた。今回参加したことにより、自分は臨床の道に進んだとしても研究を続けていきたいと思うようになった。そのためにこれからも学生の間はできる限り研究を続け、また質問力を高めていきたい。

医学類2年 森田 一矢

 私は今回「高等哺乳動物フェレットを用いたタナトフォリック骨異形成症の大脳皮質病態の解析」というタイトルで発表させていただきました。タナトフォリック骨異形成症(thanatophoric dysplasia; TD)は骨格系と神経系に主に異常が見られる疾患です。脳神経系には小さなシワが多くできる多小脳回と、神経細胞の異所的な集積である、脳室周囲結節性異所性灰白質(periventricular nodular heterotopia; PNH)が見られます。PNHの病態は現在もほとんどわかっておらず、その理由としてはTD患者の脳サンプルを得るのが困難であること、また、適切なTDモデル動物が存在しなかったことが挙げられます。最近、当研究室では高等哺乳動物であるフェレットを用いて新規のTDモデルを作成しました。今回、このフェレットTDモデルを用いてPNHの構成する細胞群の同定、およびPNHの病態解析を行いました。その結果、PNHは主に大脳皮質の上層に存在するニューロンと抑制性介在ニューロンで構成されていることを見いだしました。また、PNH周囲に放射状グリア線維の走行に異常があること、そして脳室表面に異常があることも見いだしました。これらのことから、PNHの形成が神経細胞の移動障害によって引き起こされる可能性があると考えています。
 同世代の方々と各々の研究に関して討論を重ねることができたという点で充実していました。私は今回タナトフォリック骨異形成症という疾患の病態解析を行いましたが、全く分野の異なる人に説明をすることで改めて自身のテーマに対する考えを深めることができました。他の研究発表もどれも論理的で参考にさせていただきたい発表が多く、有意義な時間を過ごすことができました。また、研究をなさっている先生方のお話を伺えたのも貴重な経験でした。臨床医学から基礎医学に進まれた先生が、学生時代の基礎医学体験が大いに役立っていると話されていたのが印象的で、MRTプログラムに参加することの意義を再確認できました。「実験はうまくいかないこともある。だからこそハードワーカーであれ。そして予想外の結果にこそ新しい発見がある」という言葉は鮮明に記憶しています。このことから、将来臨床を行いつつも基礎研究に携わり医療に貢献したいという自身の目標を具体化することができました。今回発表させていただいた研究については、脳にシワがあるフェレットを用いた実験を行ったことからよりヒトに近いレベルで結果が得られたと考えています。これからも基礎研究の結果が臨床で応用されることを念頭に置いて研究に取り組んでいきたいです。

医学類2年 南川 真季

 今回のリトリートを通じて、自分と同じように基礎系の研究室に入り、研究を行っている医学生が全国にはたくさんいることや、思いがけない発見が今後の医療の発展につながることを学んだ。医学生の話を聞いていると、研究に熱中し出した理由や今後の展望、将来像が三者三様だと感じた。普段、わたしが大学で研究をしていても、自分と同じような立場にある学生―医学生としての勉強をしながら、研究もする学生―との交流の機会などまず無いので、他の学生がどんなことを行っているのか、全く見えなかった。しかし、このリトリートを通じて、全国には同じ状況の中研究に精を出す学生が多くいることが分かり、わたしの大きな励みとなった。
 また、「思いがけない発見、わくわくするようなデータ」を出すことが研究をする上での大きな活力になると感じた。自分で仮説を立て、その仮説が立証され得るようなデータを集め、理論を展開していく。その理論が新薬開発につながるものであったり、新たな治療法の確立の一助となったりするものであるから、自分は研究に夢中になるのだ、という声が多く聞かれた。中には海外の大学で研究をしたという人や、製薬会社と提携して結果を出したという人もいて、わたしも彼らに負けずに研究を重ねていこうと思うと同時に、いずれは自力でそのような研究成果を出したいと考えた。
 まだ予定の段階ではあるが、再来年度はこのリトリートが金沢を主幹として行われることになっている。今回は初めての参加だったので、態度的にはまだまだ受け身で、研究内容も全て自分の出したものというわけでは無かった。今回でリトリートがどういうものなのか、全体的な雰囲気をつかむことができたので、可能ならば来年度も参加し、再来年度に果たさなければならない主幹校としての役割―司会進行やオーラル発表、お越し頂いた方々のお世話など―をよく見て学んでおこうと思う。
 基礎の知識は、臨床に行ってからも非常に重要だ、というお話を多くの教授から頂いた。基礎医学の発展のもとに今日の医療界があるのだということを、このリトリートで再認識することができた。医学生としての勉強もさることながら、研究についても同等の研鑚を積み、今後の医療界に貢献していきたいと考える。

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